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伝説のプログラマ、ウェアラブルコンピュータを開発中!?

日本ではあまりメジャーではないが、アメリカではゲームプログラマーなら誰もが一度憧れる伝説のプログラマーが、マイケル・アブラッシュだ。

彼はグラフィックス・プログラミングに関する伝説的な書籍をいくつも書き、ベストセラーを連発している。


http://www.amazon.com/Michael-Abrashs-Graphics-Programming-Special/dp/1576101746?tag=wp-amazon-associate-20

それだけではなく、WindowsNT(後のWindows2000、そして今のWindows7の原型となる)の開発を担当し、FPSというジャンルを決定的にした伝説的ゲームソフトQUAKEを開発し、世界を震撼させた。

その彼が、今はゲームソフト会社Valveへ転籍し、なんと現在、ウェアラブルコンピュータを開発しているらしい。
ウェアラブルコンピュータとは、「身につけることができる(ウェアラブル)」コンピュータということで、長年世界中の研究者たちが研究してきたもの。頭部に装着するヘッドマウントディスプレイと、腕に装着するキーボードやポインティングデバイスで操作するザイブナーのものが有名だが、ザイブナーは残念ながらビジネスをうまく軌道に載せることが出来ず、ウェアラブルへの夢は潰えたかに見えた。


※ザイブナー社のウェアラブルコンピュータ

しかし21世紀も10年経ち、GoogleがARグラスを本気で作り始めるという現在、ウェアラブルコンピュータも復活の兆しが見えて来た。
Valve社といえば、HalflifeシリーズやCounter-Strikeといった一人称視点ゲーム(FPS;First Person Shooter)で世界的に有名な会社だ。

そのゲーム会社が、なんとハードウェア、しかもウェアラブルコンピュータを作るとなったらこれは相当面白いニュースだ。
どうしてそういうことになったのか、という経緯を、生きる伝説であるマイケル・アブラッシュ自身がブログに綴り、話題を集めている。

Valve: How I Got Here, What It’s Like, and What I’m Doing

あまりにも刺激的な記事なので、日本語参考訳を以下に紹介する。

バルブ:私は何故ここに来たのか、ここはどんな会社なのか、ここで何をしているのか

全ては「スノウ•クラッシュ(訳注:ニール・スティーヴンスンのポストサイバーパンク小説)」から始まった。
もし僕がメタバースという概念に夢中にならなかったら、もし閉鎖型ネットワークの3Dがどのように実現できるかというアイデアを思いつかなかったら。「僕には実現できる」と思わなかったら、いや「僕はその仕事がやりたいのだ」と思わなかったのならば、Valveにはたどり着かなかった。
1994年。

僕はマイクロソフトで仕事していた。

ある日、本屋で偶然「スノウ•クラッシュ」を見つけた。立ち読みするつもりだったが、少し読み始めたら、あまりにも気になって買ってしまった。

読んだらすごくテンションが上がった。「このほとんどが実現できるぞ」と思ったのだ。少年時代からSFにハマってきた僕にとって、これは大チャンスだった。

そこで、マイクロソフトで3Dエンジンを作ろうとした。

しかし、そんなにすごいプロジェクトはどうもやらせてもらえそうになかった。

ちょうどそんなとき、Idソフトウェアで「DOOM」を開発したジョン•カーマックがシアトル(訳注:Microsoft本社のあるワシントン州の都市)へ遊びに来た。

それまで一度しか会ったことはなかったが、僕が書いた記事を読んだことをきっかけに、ジョンは結構僕のことを気に入ってくれたらしい。

前に会った時、「うちの会社に来ないか?」と誘われた。

当時の僕はWindows NTの作業で目一杯だったし、マイクロソフトとかなり深く関わっていたし、大量のストックオプションも持っていたしで断ってしまった。

今回も誘われるんじゃないかな、と内心思っていたんだ。

ところが、2時間ぐらいの間、ジョンはそういう話をぜんぜんしなかった。

彼が僕にしたのは、インターネットのゲームサーバーの話だ。

ユーザが自分でステージをデザインし、自分でサーバをホストして他のユーザをネットワーク経由で同時に遊べる可能性についてだった。

気付けば、それはなんと、メタバースを実現する方法そのものだ。ニールの小説に出てくるものよりは劣るけれども、驚異的で、輝かしくて、信じられないことに現実だった。

それからジョンは僕にIdに来ないかとまた誘った。

そんな面白い未来を創りだす仕事を断れるわけがなかった。

ジョンとの仕事は、まるで「マトリックス(訳注:1999年公開のサイバーパンク映画)」だった。

ネオが色んな武芸を瞬間的に学ぶシーンみたいだ。3D、インターネットのクライアント・サーバー・マルチプレイヤー・ゲーム、Mod、スクリプト…頭は爆発しそうだった。

たった二人のプログラマーである僕らはまるで宇宙に行ったようだった。あまりにも色んなことを考え過ぎて、毎日無事帰ることができたというのは奇跡のようだった。

あっという間に16ヶ月が経ち、「Quake」が完成した。

ものすごく満足感があった。

「Quake」が革命的なゲームになったのはもちろん、自分もプログラマーとしてさらに成長できた。

まあ、ゲームとして今一のところはあったけど、技術的な面では実に素晴らしかった(ジョンの功績はかなり大きい。彼は最高の発明家であり、駆動力となった)。

「Quake」が生み出したジャンルであるFPS(一人称視点ゲーム)とコミュニティーは15年経った今までも続いている。バルブの周りの同僚も、「Quake」をきっかけに仕事を始めた仲間が多い。ある意味、僕も「Quake」を元に自分の将来の仕事を作った。

1996年。

マイク•ハリングトンとゲイブ•ニューウェルがIdにやってきた。

彼らはマイクロソフトを退社してValveを設立していたところで、「Quake」のソースコードのライセンス供給の依頼にやってきた。他のIdの社員にとってはそれほど関心のない話だったろうけど、僕はマイクロソフトにいた頃、二人にとてもお世話になっていたので直接やり取りをしてライセンス供給契約を結ぶことにした。
最終的に、全員にとって良い取引となった。ライセンス料でIdはかなりの利益を得たし、Valveはあのコードを元に「Halflife」を開発し、大ヒットをとばした。

とはいえ、その頃Idを退社しようと思っていた僕は、あまりその恩恵には授かれなかった。

マイクロソフトに戻るつもりだったが、「一緒にValveを立ち上げないか?」とマイク達に誘われた。

悩んだが、ベンチャー企業はしばらくいいと思って、結局マイクロソフトに戻ることにした。

それから2年ほど、自然言語処理をやった。とても楽しかったが、僕が生きているうちに解決できない問題ということに気付いた。

マイクロソフトに戻るのは結局あまりいい判断じゃなかったが、致命的でもなかった。

Valveはとてもビジョンがあって、ちょくちょくValveにいる仲間に声をかけてもらった。

それから、14年が経って、やっと転職することにした。

Valveは評判がよかったし、知り合いも多かったので、入ってみることにした。

実はバルブはどういう会社なのか、よく分からなかったが、まあ、今までの会社と似たような雰囲気だろう、と思っていた。

ところが…
バルブは違った。

これまで僕は30年間弱、色んな会社で色んな仕事をしてきた。コンサルティングを始め、雑誌や本の著者までも、幅広く挑んできた。一人でも、チームのメンバーとしても活躍してきた。OS、ドライバー、ファームウェア、自然言語処理、コンソール、プロセッサー設計などをやってみた。

ベンチャー企業も、大企業も経験がある。どれも面白くて、勉強になった。その中、実に素晴らしいところはいくつかあった。結論をいえば、テック業界は知り尽くしたと思ってった。
ところが、バルブは違う。
ゲイブはこう語った。マイクロソフトにいる間、ユーザーのパソコンに実際に入っていたソフトウェアは何なのかというアンケートを取ると、2番となったのは、ウィンドウズだった。
一番となったのは、なんと、「Doom」だ。
テキサス州のメスキート市にあるたった10人のプログラマー集団が、世界最大のソフトウェアメーカーより成功できたなんて…

世の中が変わったに違いなかった。

階級制度は元々軍隊が創った概念だ。1000人の兵士を率いるにはぴったりの制度で、産業革命にもとても実用的なやり方であった。

ただ、業界が変わってしまったことの証拠は「Doom」だった。産業革命と違って、同じことを繰り返すにはあまり価値はなかった。

勝負となったのは、瞬間的なインスピレーションだった。「Doom」の発売以来、誰でも同じようなゲームを作ることができる。

実際のところ、「Doom」のマネと言えばいいゲームがたくさん現れた。だが、「Doom」ほどゲーム業界を一変させたゲームは一つもなかった。プログラマーなら、Facebook、Google、ツイッターといったサービス、そして「アングリーバード」のようなゲームは簡単に書けるはず。だが、あまり価値はない…この業界では、先に思い付かないと金にならない。
利益のほとんどが最初のインスピレーションから生まれるなら、同じようなことを繰り返すに向いていた今までの階級制度にはあまり価値はない。

先に新しいアイディアを出して、それからどれだけ改良を加えて行けるかどうかが勝負だ。

階級制度はなかなか革命的なアイディアを出せない…というか、そもそも許せないことが多い。これに対して、Valveは自由に考えて、自由に仕事をさせる環境を作ろうとして、枠外に想像できる人を歓迎した。というわけで、Valveには階級、または管理職のような概念はない。
「ちょっと待った!」と思うよね?

そんな会社あり得ないと思うに違いない。

実は僕もそう思った。

ちゃんとした管理職のいない300人規模の会社、信じられなかった。

僕の経験では、うちの会社に慣れるには半年ぐらいがかかる。命令も受けず、上司に判断されない会社、しかも決まった職名のない会社だ(功労金は上司ではなくて、同僚が決めてくれる)。どの仕事をすれば良いのか…つまり、会社のためにどうやって時間を巧みに使うか…を判断するのは一人一人の責任。

今までと違う作業をやろうと思えば、机を移転するだけで他のチームに入れる(机は全て車輪が付いている)。もちろん、他のチームメンバーと相談しなければならないけど、それはルールというよりむしろ習慣と言って良い。

チームのメンバー達はみんな、いろいろな作業をする:コード、デザイン、企画、音楽などだ。

純粋なプログラマーやデザイナーなどはいない。決まった予算や厳格な方式がないため、会社全体がいつでも根本的なところで変われる。実は、誰もやろうとしていないため、ゲイブ達にとってまだ会社の充実していないところが多い。

この不思議な環境の中で、最も信じられないのは社員の信頼だ。秘密にされたり、、疑われたりすることは一切ない。Valveのソースコードは全てオープンで、誰でもいつでも編集できる。誰でも好きなように作業してもいい。Steamワークショップもこのように生まれたのだ。社員全員は会社のことを知っていて、隠されることはない。Valveは社員全員にこの「信頼」を与えて、それ以上作業の邪魔はしない。
もちろん、Valveは理想郷ではない。

完璧な社員は一人もいないので、激しい喧嘩もある。

だが、相手をきちんと認める態度のため、いつも皆が納得できる解決で終わる。商品を実際にリリースする時は、やはり〆切が厳しくなってストレスがたまる(だが、Steamのお陰でパソコンの場合は大分柔軟になった)。社員が間違ったやり方を通そうとして、周りの人に声をかけてもらうまで時間を無駄にすることもある。
そして、皆が適当に好きなことばかりしているわけでもない。

ある日プログラマーが部屋に閉じこもって帽子を織ろうとしたことがあった。それはもちろん怒られた(だが、帽子の織り方を体験させるプログラムだったらアリだろう)。

各プロジェクトはごく自然にチームが組まれる。リーダーは決められるが、リーダーになった結果昇給したり、会社の中で昇進したりすることは一切ない。それは、次のプロジェクトでもリーダーになることは滅多にないからだ。大まかな担当以外、リーダーには特に威権はない。プロジェクト毎、具体的なゴール、そしてそれに相応しいスケジュールが決められる。もちろん、各プロジェクトは大分違う。
こんなやり方はうまくいけると思えないかもしれないが、奇跡的にうまくいっている。自然淘汰による進化に近いかもしれない。時間の無駄になるものはちょくちょく出てくるが、その分、とんでもないぐらい凄いものも出る。Valveが作ったゲームはもちろんそうだし、Steamもそうだ(Steamにも当然、管理職は特にいない)。Valveが長期的に成功してきたことは、このやり方が正しいことの証拠だろう。全てが、勇者な人材を元にしている。
ということで、優秀な人材の居心地の良い会社に違いない。

僕はどんな仕事しているのかって?

僕の個人的な経験を説明してみる。
前に言ったように、ここに来る前はValveのことをよく知らなかったし、ちょっと変わった入社の経験をした。

技術的な作業をさせられると思っていたし、何か、具体的な命令が下されることわ期待していた。
しかし、命令は来なかった。来たのはアドバイスだけだ。

直接に導かれることは一切なかった。

たとえば、「Portal 2」の開発プロジェクトの時の話をしよう。

僕は最適化には結構経験がある(※訳注:これはかなり控えめな表現で、実際にはアブラッシュは最適化の天才として知られている)ので、担当者のジェイ・ステリに声をかけて、「僕が最適化を担当しようか」と提案した。

「まあ、やってもらってもいいけど、なんとかなるだろう」とジェイは答えた。

そういう会話を何回か繰り返したら、やっと気付いた。

ジェイが言おうとしていたのは、最適化を出来る人間は何人かいるが、僕しかできないことは何なのか、ということだった。

少しずつこういうやり方に慣れてきて、ようやく意外な研究を始めた:ウェアブルコンピュータなのだ。
ウェアブルコンピュータとは一体なにか?

端末を無くして、現実の世界とPCによるAR(拡張現実感)映像を同時に見えるための道具である(ターミネーターをイメージするといい)。

デスクトップ、ラップトップ、ノートブック、それにタブレット…コンピュータというものは、普及してきたにつれて、どこでも触れるようになってきた。

論理的に考えると、最終的な結果は常にコンピュータを利用する状態。これはウェアブルコンピュータだ。

20年後、生活の基準となるに違いない。その端末というのはメガネやコンタクトのようなものだと思うけど、直接神経に接続してもおかしくはない。20年後と書いたが、この新しい革命はより早めに来るのではないか。入力、出力、小型化などの技術は驚くほど早い進化を遂げている。

10年後、ひょっとしたら3-5後この夢が現実のものになるかもしれない。
ただ、いかに優れたハードウェアであっても、同じ程度の優れたソフトウェアが入っていないと意味はない。ウェアブルコンピュータには一体どのようなソフトウェアが必要なのだろうか?

ユーザーはどうやって操作するのか?

コンピュータは、どうやってユーザーの周辺を認識するのか?

人間の脳は拡張された現実感を受け入れるのか?そもそも、拡張現実感は人間の生活に役に立てるのか?本当に実用的なのか?具体的などのようなハードウェアが必要なのか?意味深い謎が山ほどある。

「Quake」と同じだ。

実現するには様々な問題を解決しなければならない。

うまくいけば、これは技術的な革命になる。

考えてみれば、僕らは「スノウ・クラッシュ」の世界に近づいてきた。あの小説がなかったら、今の僕はこんな仕事しているはずはない。そもそも、Valveという会社も存在しないかもしれない。
考えてみると、ウェアラブルコンピュータはValveにとって価値ある分野なのではないか。

そこでValveの同僚に相談すると、彼らは大賛成してくれた。

ただ一つ心配だったのは、どう実験すれば良いのかということだ。

成功か、失敗か、きちんと判断できる仕組みが必要だった。

具体的な計画を立てるには社内の手続きはほぼなかった。同僚と相談してから、自分で開発を始めたのだ。
あなたの仕事はどうだろう?やりがいがあると思っただけでプロジェクトが作れたなんて、かっこいいと思わない?

まあ、これはあくまでも研究に過ぎない。商品になるかどうかはまだ先の話だ。ひょっとしたら、商品になれないかもしれない。今のところ、未来の可能性を調べているということだけだ。

Valveは、常に様々な実験をして、その結果から学ぼうとしている。失敗から学べることがあれば、失敗でも許すことができる。

このため、仕事は非常に速く進む。何を学ぶかによって研究が変わっていくわけだ。

研究の質は、結局は研究者の質に掛かってくる。

今でももちろんうまくいっているが、さらに優秀な人材が必要だ。しかも大勢の優秀な人材が必要なのだ。

ハードウェアが得意な人、ソフトウェアが得意な人、ファームウェアが得意な人、ゲームが得意な人、UIに詳しい人、それにプログラマー、エンジニア等…
あなたも声を上げて見ないか?
もし、ウェアブルコンピュータに興味があるなら、ぜひとも連絡を待っている。

優秀な人材を募集しているので、とりあえず僕にメールを”撃って“(訳注:原文ママ)みて。

ウェアブルコンピュータに興味がなくても、ぜひうちの会社を調べて下さい。

ゲーム会社でありながら、ダウンロード販売をはじめ、色んな分野で研究している(ウェアラブルコンピュータもその一つ)。そのため、色んなスキルのある人材が必要。アニメーター、デザイナー、作曲家、シナリオライター、プログラマー、心理学者、データマイニングを得意とする人、統計学者、UIのデザイナー、アカウントマネージャー、エンジニア、等。

もしあなたが一流の経済学者なら、大歓迎。400万人のユーザーがいる経済圏の研究ができる。退屈するヒマはないだろうね。
バルブに興味があれば、ぜひともご連絡下さい:http://www.valvesoftware.com/jobs/job_postings.html.
お待ちしております。

訳:Eric McEver , Ryo Shi3z

原文: http://blogs.valvesoftware.com/abrash/valve-how-i-got-here-what-its-like-and-what-im-doing-2/

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