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48時間でゲームを作るサバイバルイベント、グローバルゲームジャムで見たものは!?

こんにちはshi3zです。
今は東京は皇居のほど近くにある、国立情報学研究所に来ています。
もちろんグローバルゲームジャムに参加するためです。

グローバルゲームジャムとは、その日、その時、アドホックに結成された即席チームで全世界同時に行うゲーム開発イベントで、年々規模を拡大して行き、今年はなんと全世界1万人以上の人々が参加しました。国立情報学研究所もその会場の一つというわけです。

参加者はバリバリのプロもいれば、半分退役軍人みたいな元ゲーム開発者やゲームが好きな大学生、ジャーナリストや単にゲーム好きな会社員の人など多種多様な人物。

彼ら彼女らが入り乱れてチームを作ります。
グローバルゲームジャムの公式ルールでは、「同じ組織に属した人同士によるチームはNG」
そこで各会場のコーディネーターたちが頭を悩ませてチーム編成をさせるわけです。

そして今回、なんと僕が組む相手となったのは、既報の通り、大ヒットゲーム「どこでもいっしょ」の開発者であり、株式会社ビサイド代表取締役社長、南治さん。

さあこれから48時間。どんなドラマが始まるのか!?

その一部始終を振り返ります。

まずは感動的な開会式から。

いきなり登場したのは、ジョン・ロメロ。

DOOMのゲームデザイナーであり、「FPS(一人称視点シューティング)」というゲームジャンルを開拓した、伝説的な人物。

 

僕も一度だけ、彼とGDCのカフェテリアで食事をしたことがあるけど、その間もひっきりなしに通りすがりの人々にサインをねだられていたのをよく覚えている。変装しなけりゃ会場を歩くことすらできない。まさにロックスターのようなゲームデザイナーなのだ。

 

そのジョン・ロメロから、ゲームジャムに挑む上での心構えをとくとくと聞く。

それから、世界中のゲームクリエイターがこのイベントに先立ってゲーム作りへの思いを語る。

最後は、シムシティの開発者、ウィル・ライトの言葉で締めくくる。

はっきり言って、この開会式だけでも見て興奮した。来てよかったと思った。

それからチームに別れて作業開始。

僕と南治さん、二人の社長チームは、要するに現役を引退したロートル開発者のチーム。
とはいえ、もとプログラマーとして普段偉そうなことを言ってるだけに、若い者に情けない姿は見せられん。

なぜかフランス語のテスト勉強で忙しいから参加は無理、と言っていた伏見くんも「朝までだけなら・・・」ということで強引に参戦。なんだよ、やりたいんじゃないかよ。

というわけで、「さあいよいよスタート!」となった瞬間、僕は言った。「よし、飯を食おう」

腹が減っては戦はできぬ。

というわけで、会場近くのロイヤルホストへ。
飯くらい先に行っておけよ、というツッコミもあろうが、それが違うのだ。

意外と良いアイデアが湧くのは、なにか食べているときなのだ。
こういうときこそ、どっしり構えて頭に糖分を補給しながらリラックスして挑むのが僕たちのスタイルだ。

というわけで黒毛和牛ステーキを注文。もちろんポタージュとコーヒーもセットだ。

 「んで、南治さん、なにつくろうか」

 「んー、どうしましょうかねえ。あのー、おはなしゲームとかどうですか」

 「それいつも仕事でやってる奴じゃん!」

 「いやー、そういうのとはちょっと違う奴で。たとえばTwitterから発言ひろってきてゲームに出すとか」

 「それどこのみんいつ・・・(笑)いや、そういうのも当然アリだと思うけどね」

 「アチーブメントにありましたね、アスキーアート使うってやつ」

アチーブメントとは、グローバルゲームジャムに用意されているルールで、ジャム本体のテーマとは別に、個別に達成できる目標である。

アスキーアートを使う、意外にも、プログラミングすることがゲームになっている、とか、1000i人以上が同時接続できる、などがある。

 「僕が作りたいのはねー、まずWebGLを使うこと、それと、NodeJSでリアルタイム通信をすること、それからTwitterアイコンが出てくること、だね。できればkiloplayer(1000人以上同時参加)のアチーブメントを取りたいな」

そこで伏見くんがすかさず

 「清水さん、キーノートスピーチでさんざん”無茶はするな”って言ってたのにいきなりむちゃくちゃ言ってないですか?」

 「なにいってんだよ。48時間もあるんだぞ。ふだんのハッカソンは4時間から8時間。その何倍もあるのに退屈な目標を設定してどうするんだよ。できるかできないか、そのギリギリのヒリつく感じがなくてなにがゲームジャムだよ」

と僕が鼻息を粗くすると、

 「えー、でも清水さん、あのー、もうちょっと簡単なところで落ち着かせませんか?まずは」

と南治さんがたしなめる。

 「うーん、じゃあね。まずは3DでTwitterのアイコンだせるかやってみてもいい?それとNodeJS」

 「それどのくらいで出来るんですか?」

 「朝までにはできるんじゃないかな。まだ8時間もあるし」

と僕が言うと、南治さんはちょっと顔を引きつらせた。

 「マジっすかー」

そこで伏見君

 「じゃあ僕サーバー部分作りますよ。朝までに。得意なんで」

 「で、でもダメだったら・・・・」

 「朝、どこまでできてるかで判断しましょうよ。とりあえず我々はほら、プロなんだから、ちょっとくらい苦しい思いでもしなかったら、カッコわるいじゃないですか。それで朝になってこりゃ完成しそうにないなって解ったら、次のこと考えましょう」

 「わ、わかりましたよー」

南治さんはちょっと不安そうだった。
まあそうだろうなあ。

そんなわけで僕がその場でひょいひょいと書いたゲームの企画案はこんな感じになった。

会場にもどって、gl.enchant.jsを使ってまずは簡単な画面イメージを作る。
30分くらいでここまでできた。

しかしこれは地獄の始まりだった。
なぜかTwitterアイコンが僕のやつ意外表示されない。

焦る焦る。額からはじっとりと汗。
やばい。なにがおかしいの?

そして午前三時。
企画案発表の時間が来た。

デジハリ大学の神田君の所属チーム「ロデオドライブ(ハリウッドだから)」は今回のゲームジャムのテーマであるウロボロスをそのまんま使ったパズルゲームを企画していた。

昼の部のメンバーたちはさすがにもうアルファに近いところまで完成させていた。

さて僕はというと、企画書とか書くのが面倒だったので、とりあえずgl.enchant.jsでTwitterアイコンを出すところまでは完成・・・させておきたかったが、出ない!

とりあえずもやもやした話をして誤摩化すことになった。

Twitterアイコンはなぜ表示されないのか?
それはネットワークが悪いのか、それともブラウザのセキュリティ関連の動作が悪いのか、gl.enchant.jsが悪いのか、それともTwitterのアイコン画像そのものが悪いのか、まったくわからなかった。

しかもわからないのは、Twitterの画面に表示されているアイコンのURLを直に打ち込むとちゃんと表示されるのに、API経由だと全く表示されないという謎の仕様だった。

これがわからないから、ぜんぜん先に進まない。
やばい、こんなつまんないところでつまづくとは!

それでうんうん悩んで悩んで、最後に「もしかしたら、テクスチャのサイズって、2の乗数じゃないとだめなんじゃないの?」と思って、gdを使ってTwitterのアイコンを自動的に128×128に変換するサーバースクリプトを書いたら見事動作! もう泣ける。こんな初歩的なところでつまづくとは。

もうこれだけで4時間はロスしてしまったことになる。

明け方、伏見君が「サーバーできました!」と言ってデモを僕たちに見せてくれた。
確かに、なんか二次元のテストプログラムがなんとなく動いてるような気がする。

「じゃあ今日は一旦、家に帰りましょう」といって南治さんと伏見君はクルマで家に帰った。

僕は歩いて帰れる距離なので、ぶらぶらと帰ったんだけど、帰りながら頭の中が整理されて来た。
南治さんは普段、JavaScriptでプログラムを書いてないのでけっこうしんどそうだった。

いつも僕につきあわせて悪いな、と思う。

南治さんは電通大のかなり上の先輩だ。
僕と在学期間はかぶってない。

それでチーム名もマル調にした。
電通大の学園祭は調布祭といって、東京都調布市で行われる。
その調布祭実行委員の名前が、通称、マル調なのだ。
僕は第46代目の総務で、それが僕の最後の青春だった。

特に南治さんが悩んでいたのは、僕が「召喚獣」と呼んでいたTwitterアイコンの扱いだった。
Twitter上のフレンドを呼ぶと、独自のアルゴリズムが割り当てられて敵と戦いに行く。

僕は本当は、これをカードゲームのデッキのようにしたかった。
どんな友達をデッキ(フォローリスト)に入れているかによって戦い方が変わってくるような戦略性があったら面白いんじゃないかと。

友達のIDによってパラメータや性格が決まったら面白いね、と話をしていた。

あわよくば、友達の性格をプログラミングできるようにして「プログラミングすること自体がゲームになっている」アチーブメントも狙いたい、と思っていた。

僕がそういうふうに考えたのは、そもそも最近のソーシャル・ゲームを見て、いろいろ思うところがあったからだ。

ソーシャル・ゲームはいまいち誤解されている。
儲かりすぎてる、というのもあるが、なにが面白いのか、ちょっと触っただけじゃわからないようになっているからだ。

何が面白いのかわからないものにみんなが夢中になっているのはかなり不気味だ。
ずいぶん前にiPhoneで大人気だったPocket Godが、なんで大人気なのかぜんぜん僕には理解できなくてすごく嫌になったことがある。

旧来のゲーム開発者にとって、ソーシャル・ゲームも似たところがある。
僕も何本かのソーシャル・ゲームの開発に関わって、それでもなにが面白いのか、その本当のところが解ったのは、実際にソーシャル・ゲームの開発をやめてからだった。

あるとき、突然、理解できたのだ。
いや、それすらも錯覚かもしれないが、それでも自信をもって「なるほど、これは面白い」という領域に達するまで、僕はものすごく長い時間、それを遊んでみなければならなかった。

ある意味で、作り手であるときにはソーシャル・ゲームの面白さなんか解らなかった。
常になにか「ここが鍵なのか?」「こっちが鍵なのか?」という仮説を立てながら探りを入れるような態度で遊ぶソーシャル・ゲームは、本当につまらなかった。

けど、仕事じゃなくなったとたん、それが面白くなったのだ。

今の僕は、ソーシャル・ゲームの面白さ、特に最近流行っている「レイドバトル」とか「ギルドバトル」とか言われる仕組みの面白さは、「マンモス狩り」だ、と思っている。

これはどういう遊びかと言うと、なんか巨大で強い敵がいて、一人では絶対に倒せないか、倒せるとしてもおそろしく時間がかかるようなことに、友達が一緒に参加してくれることでライブ感が生まれ、もちろん速く倒せる、一人より友達と一緒のほうがもっと楽しい、という遊びだ。

これは動画共有サイトが、単なる動画を配信しているのか、それとも動画を見ているユーザー同士でコメントを交換できるのか、というくらいの違いがある。

コミュニケーションのアーキテクチャを敢えて不自由にデザインし、そのなかで遊ばせるというやり方がとても上手いのだ。

そして当然ながらこれは、ソーシャル・ゲームだけの特徴ではない。パーティを組んで強大なボスやクエストに挑み、力をあわせてレベルアップを目指す、という遊びはそもそもネット上の本格的なMMORPGが持っている面白さの本質的な部分なのだ。

しかし同時にネットのMMORPGは、面倒すぎる場合もある。
僕もなんどか挑戦しようとしたが、あまりにまどろっこしくて続けることが出来なかった。
内容は凄いし、ハマれば面白そうというのはなんとなく解るのだが、面白いというレベルまで遊び込む前に巨大なハードルがある。

そういう意味では最近のソーシャル・ゲームは、MMORPGの面白い部分、上澄みの部分だけを上手に抽出してわかりやすくリパッケージングしたものだ、と解釈することもできる。

とはいえ、初期の段階と違い、いまや日本のソーシャル・ゲームもどんどんリッチな方向へ舵を切っている。既にenchant.jsもふつうのスマートフォン向けソーシャル・ゲームで使われ始めている(なぜか弊社はまだ使っていないが)。

その先にあるものはなんなのか。
ただ一緒に空間を共有するだけで面白いというのはどういうことなのか。

それにとても興味があった。

みんなで巨大なボスを倒す、みたいな遊びがしたいなと思っていたので、最初はNPCを出すことを検討していた。

しかしそのアルゴリズムを考えたり、実際に創りだしたりするのはかなり骨の折れる作業に思えた。

そんなことをぐるぐると考えていたら家にたどり着いて、それから泥のように眠った。
6時間後、僕たちは再び会場に集まった。

 「やあ清水さんおはようございます」

 「どうも南治さん。おはようございます」

寝て起きたら驚くほど頭の中がすっきりしていた。
削るべき仕様と残すべき仕様がかなり頭の中で整理されている。

 「南治さん、考えたんですけど、今回、プログラムをカスタマイズするようなアチーブメントはひとまず諦めましょう。まずは伏見君の書いたコードを引き継がないといけないと思いますので、そこから手をつけていただけますか」

 「僕サーバー書いたことないんですけど、大丈夫ですかね」

 「PHPくらいはあるでしょう?」

 「それもないっす」

 「マジですか。まあでも大丈夫だと思いますよ。NodeJSは衝撃をうけるくらい簡単なんで」

僕はwise9の過去記事を南治さんに見せた。

 「はあなるほど。簡単そうに見えますが・・・」

 「とにかくやってみましょう」

 「はい、わかりました」

そういうわけで開発再開。
寝る前にテクスチャ問題を解決した僕は、まずは画面のイメージを固めようと思った。

そこでとりあえずIGDA日本の前代表、新清士氏をボスとして登場させてみることにした。

大きな新清士はそれだけで面白かったんだけど、なんかイマイチな気がしたので小さな新清士も表示させた。

これはまあ単純に笑いを誘った。

それでみんなでアルファ版を見せ合う時間がやってきた。

Unity社の高橋啓次郎らのチームは、ウロボロスがテーマなのでスネークゲームを作っていた。

この時点ですげえ完成度だ。さすが高橋啓次郎、と思った。この時は。

僕らは巨大な新清士でとりあえず笑いをとった。

gl.enchant.jsの高橋諒くんのチームは、昼の部からの参加だったこともあるけどかなりハイレベルなゲームを開発していた。

ウロボロスから円環のイメージということで、極座標系をまわりながら隕石を破壊したり集めたりするゲームを作っていた。

驚いたのは、Unityを使っている他のチームと遜色なかったこと。
Unityほどの完成度のあるミドルウェアと比べて、まさかgl.enchant.jsが比肩しうるとは正直僕も思っていなかった。

僕のように3Dプログラミングだけ、バカの一つ覚えみたいにやってきた人間と比べて、高橋諒くんはまだ3Dプログラミングを始めて数ヶ月しか経ってない。

凄い奴もいるもんだ、と思った。

それから「おはようβ」とよばれる、朝10時のβ公開に向けてまた開発が始まった。
これはもうマラソンだ。

IGDA日本の新しい代表になった小野さんのチームは、UEIの鎌田君がメインプログラマーになって、アクションパズルゲームを開発していた。

三人ともメガネをかけていたので、「チームサングラス(3グラス)」という名前になった。

鎌田君といえば、一年前のwise9の記事で、GDCに参加しておこなった「環太平洋ゲーム開発オリンピック」において、「修行ゲーム」シリーズや「決して勝つことも逃げることもできないRPG」などの数々の前衛的な作品を作り上げて来た奇才。

果たして今回はどんな作品を作っているのか・・・・

 「こけし・・・こけしですよね?」

 「いや、ニューヨークでしょ?」

 「あれなんて言うんでしたっけ?あの・・・ほら、ガリレオ・ガリレイが・・・」

会話を聞いていてもぜんぜんわからない。
近づいてみると

 「あっ! ・・・ダッダメです。企業機密です!」

と、上司に対して企業機密を盾に情報開示を拒否する鎌田君。なんなんだそれは。

さすがに二日目となるとみんな余裕がなくなってきて、家に帰る人もいなくなってきた。

我が相棒、南治さんは・・・・

燃え尽きていた。

ただでさえ他人のプログラムを引き継ぐのは難しい。
ましてや、一度も開発経験のないリアルタイム通信サーバーの引き継ぎなんか、地獄である。

しかしやるしかない。なぜならおれたちはチームマル調だからだ。
僕はgl.enchant.jsのデバッグをしながら開発する必要が会ったし、コードボリュームはNodeJSの方がずっと少なかった。

南治さんはずっと伏見君の書いたコードのバグを取っていた。
これだったらひょっとしたらゼロから作り直した方が早いかも知れない。
いや、普通の人ならそうするだろう。

しかし南治さんはプロ中のプロだった。
どれだけ苦しくても、目の前のソースを棄てたりしない。
弱音を吐くなんてもってのほか。

それでもなんとかお互いのユーザの位置だけは同期できるようになった。
この段階でβと言えなくもない。

僕は南治さんが寝ている間にエフェクト類を作っていた。
サイバーパンクっぽくするためには、ありきたりの爆発エフェクトではつまらない、と思った。
そこで炎を敢えて青白く変えてみた。

イメージはトロン・レガシー。
そうやっているうちに、南治さんは目を覚ましたようだった。

 「ところでゲームの名前どうする?」

起き抜けに南治さんはそう聞いて来た。

 「しまった。考えてなかったね」

ふつうに考えたら、Tweetwarsとかだろうか。
しかしそれってあんまり面白くない。

じゃあなんだろう。

そういえば僕らは今回、テーマがウロボロスだからっていうのをあまり考えないようにした。
作りたいものを作るべき、というポリシーに従ったのだ。

せめて名前くらいはテーマに少し絡んでいたほうがいいのではないか。
それでウロボロスについてWikipediaで少し調べると、かなり多様な意味があることがわかった。

キリスト教グノーシス派ではウロボロスは物質の限界を表し、ヘレニズム文化圏では完全性の象徴だった。ほかにも、循環、永続、不老不死、などの意味がある。

そうであるならば、僕は日本の神道に由来する名前が良いだろうと思った。
日本の神道の名前はあまりゲームのタイトルで使われないし、外人がわからない隠された意味が込められている、というのもなかなかいい。

そしてつけた名前が「タケミカヅチ」だ。
タケミカヅチは、建御雷または武甕槌などという漢字が当てられていて、葦原中国(あしはらのなかつくに)の荒ぶる神々を倒し、平定した男神だ。

雷神であり武神。サイバーパンクなバトルゾーンにぴったりの神だった。

そしてゲームのルールとしては、永遠という概念を取り入ることにした。
このゲームでは、ログインし続けている限り、決して死ぬことなく永遠にゲームが続く。

そして時間経過とともに、HPが増大し、HPに比例して、キャラクター自身も巨大化して行く。
ある程度大きくなると、3方向、5方向、8方向と同時に打てる球が増えて行き、プレイヤー自体がボスになっていく。

これは対戦格闘ゲームで連勝を重ねる人がどんどん存在感を強くして行く、ということにヒントを得ている。

そのかわり巨大化すると玉に当たり易くなるので善し悪しである。

それと、Twitterの友達を必要に応じて召喚できる。
召喚された友達には、それぞれランダムなパラメータとアルゴリズムが割り当てられ、プレイヤーを守るように動き始める。

誰がどんな動きになるかはとりあえずランダムだ。

これで第一回目のβ版が出来上がった。

しかしサーバーのバグがとれない。

うまく友達を召喚したときに通信されないのだ。
また、いちどログアウトしたプレイヤーがゾンビのように残り続け、サーバが落ちたり、クライアントが落ちたりといった事態が頻発した。

明らかにサーバのバグだった。
やっぱり他人の書いたプログラム、しかも自分の知らないフレームワーク、自分の知らない言語で書かれたフレームワークを修正して発展させるには無理があったのかもしれない。

南治さんには辛い思いをさせてる。
どうしよう。

南治さんは未だ一言も弱音を吐かずに頑張っている。
それはプロとしてのプライドだった。

「もうやめよう」とか「方針を変えよう」とか、彼は一言も言わなかった。
必ず出来る、と信じて、ただひたむきにコードと向き合った。

それでもついに精魂尽きてるように見えたので、僕は彼にこう言った。

「ちょっと飯でも食いに行きますか」

ロイホじゃ味気ないので、上野までタクシーで言って、僕の行きつけの油そば屋、「浜そば」に行くことにした。

こういうときはガッツリいくに限る。

 「どうっすか?南治さん」

僕は油そばにラー油を回しがけしながら聞いた。

 「いやー、難しいですねえ」

南治さんはいつものような笑顔でそう答えた。
やめよう・・・って言うかな、と僕は思った。
もともと、これを作りたかったのは僕だ。

南治さんは、いつだって僕の頼みを聞いてくれた。
福島ゲームジャムのときだって、僕の代わりに書いたこともないenchant.jsのコードを書くチームを作って30時間もの間頑張ってくれた。
本当は自分だってやりたいことがあっただろうに、そういうのを一切棄てて、いつも僕を尊重してくれる。

その南治さんに、とても苦しい思いをさせている、と思うと辛くなった。

そもそもサーバプログラミングのド素人に、いきなり通信対戦サーバーのプロトコルから設計させるとか無理だったのかもしれない。

けど、その上で、僕は絶対に弱音を吐かない南治さんを信じることにした。
苦しくても、出口が見えなくても、淡々と開発を続けていく彼の姿に賭ける。

浜そばを出た僕たちはまたタクシーで会場に戻った。
戻る道中、開発に関する話はひとつもしなかった。

気分転換の結果も虚しく、バグは取れないまま朝がやってきてしまった。

僕は3時間ほど家に帰ることにした。

南治さんは帰る時間がないのでそのまま寝ることになった。

家に帰る途中で、果たして時間内に完成するのだろうかと不安になった。
やっぱりこれは難しすぎたか。
いや、でもそうじゃないはずだ。

必ずできるはずだ。
そういう思いが去来していった。

きっかり三時間寝ると、僕はサーバーのデバッグが終わるのを待つ間、新しいエフェクトを研究してみようと思った。

会場に戻ると、南治さんが僕が出て行ったときとまったく同じ姿勢、同じ表情でキーボードを叩いていた。

 「おはようございます」

 「あ、清水さん。動くようになったっすよ」

 「え、マジ!?」

確かに動いている。

 「これいけるじゃん!」

 「いけますよ!」

それから夢中でコードを書いた。
何度かつまづいたけど、彼のデバッグを待っている間も、僕は休まずに新しいエフェクトを書いた。
WebGLはcanvasに描画された情報をテクスチャとして使うことが出来る。

そこで、それを使ってCanvasに描いた文字をテクスチャとして表示することにした。

弾の代わりに「殺」という文字を飛ばしてみることにした。
しかしこれだと弾を打つ度にcanvasに描画するのであまり効率が良くない。

殺、という文字は単なるテクスチャとして描いて、それをビルボードで表示することにした。
戦略性を出すため、障害物として巨大な立方体を出すことにした。

ワイヤーフレーム風の表示になっているが、これは単なるポリゴンで、αブレンディングでワイヤーフレームに見えるだけだ。

 「清水さん!召喚獣できたっす!!」

 「おおっ!スゴイ!」

実際に動かしてみると、確かに召喚獣が同期して動いている。

 「やったぜ!」

 「あ・・・でも・・・!!!」

 「どうしました?南治さん」

 「ログアウトしても召喚獣消えないっす」

 「なぬー」

それから二人でサーバーのコードを見た。
徹底的にバグの原因になりそうなものを洗い出す。

 「見つけた!これだ!」

 「よっしゃ!」

 「サーバー再起動します!」

 「オーケー!リロード!」

 「できた!」

 「やったあ!!」

時計を見る。
終了15分前。

 「よし!もう一息!」

 「えー、清水さんまだなにをやるつもりですか!」

 「5分で終わるッ!」

僕はやる気になっていた。
最後の最後、時間いっぱいまで全力を尽くす。
妥協は敵!

自分の持てる力を全てこの短い時間に注ぎ込む
あと15分もあれば十分すぎる。

 「おい、さっきから鎌田さんが覚醒してるぞ!

 「ええっ!?」

 「残り時間であと一本ゲーム作るって!」

 「なんなんだお前の会社は」

僕はキーボードをタイプした。
心が焦って指がもつれる。
頭の中にコードは全部出来上がっていた。

難しいことはなにもない。
ただタイプする時間と、タイプミスによるバグを見つける時間。
それだけあればよかった。

 「できたっ!」

 「おお、なにを追加したんですか、清水さん!」

 「Twitterの発言をテクスチャにレンダリングしてランダムに流れるようにしたんです。ほら、最初にTwitterの発言を使いたいって、南治さん言ってたじゃない」

 「それ覚えてたんすか!?」

 「うん。まあ、時間あったし」

うしろでおおっというどよめき。
振り向くと鎌田君がキーボードに突っ伏して燃え尽きていた。

 「鎌田さんも完成したぞ」

 「残り30分で一本作るなんて信じられない・・・」

 「一体、どんな力作が・・・・」

鎌田君は控えめな男だ。
もともとはバリバリのゲームプログラマーだった。
先日enchant.jsに移植されて話題になったGlandariusのオリジナル版の開発者だ。

3Dプログラミングが大好きで、まさに寝る間を惜しんでコードを書くタイプだ。
しかし寄る年波には勝てず、自ら第一線を去った。

今は日本で最も売れているAndroid端末のUI設計者として働いている。

彼が本気を出せば、アクションパズルどころではないものが作れる。
しかしわずか30分で、一体どれだけのものが作れるのか。

しかし覚醒した鎌田君は、そんじょそこらのプログラマーでは手も足もでない。

 「こ、これは・・・・」

 「なんと前衛的な・・・」

 「こ、このゲームは・・・」

戦慄する群衆達。
僕は思わず口を開いた。

 「なんだ? なんなんだこの作品は!?」

鎌田君は聴衆の反応を楽しむようにクックッと肩を揺らすと、控えめに、極めて控えめにこう言った。

 「このゲームはEscape from GGJ。つまり、グローバルゲームジャムから逃げたくても逃げられない、そんな僕の心象風景をスケッチしたゲームです」

このゲームは、なにか黒いものが常に近づいてくる。
クリックすると人が逃げて行くのだが、黒いものがどんどん追いかけてくる。

黒いものに追いつかれても、特になにも起きない。ゲームオーバーもない。

 「逃げても逃げなくてもなんか嫌な感じがする。そしてどれだけ逃げても逃げなくてもスコアは常に0のまま。まさに仕事でもなんでもないのになぜか逃げられない、逃げたくない、そんなGGJと僕との関係性を象徴しているのですよ。そう、自らの尾を飲み込む、哀れなウロボロスのように、ね」

 「・・・・しょうもない」

 「とりあえず記念撮影しようか」

ということで時間も一杯になって記念撮影タイム。


チーム3グラス。メガネをかけた3人のチーム。
彼らの作品はこれだっ!

コケシとかニューヨークとか、謎めいた言葉の謎がいま解き明かされる!
なんとウロボロスを輪投げと解釈して行う、輪投げアクションパズル!

次に、こちらはデジハリ大学チーム、ロデオドライブ。
彼らのゲームはこれ。


隣り合うキャラクターを同じ種族のオスとメス同士をくっつけると昇天して消えるという、謎のゲーム。最初は通常のDOMベースでプログラミングした後、WebGLでスプライトを表現している。

そしてgl.encahtn.jsの開発者、高橋諒くんが所属する「スペースデブリ」チーム。

これは音楽まで付いてかなり完成度が高いぞ

そして僕たち、チームマル調

全てを出し切って戦った後の二人の中年の姿だ。

ゲームは9leapにアップするにはでかすぎるので、別サイトで遊ぶことが出来る。

http://ggj.yier.in/game/

Twitterからログインすると、他のプレイヤーとリアルタイムで対戦することができる。
ぜひ試してみて欲しい

そのあとは発表会を兼ねた懇親会。
だったのだが・・・疲労し切ったところで酒が入って記憶がすっかり飛んでしまった。
なんか途中、高橋君が泣きながら何か言うので釣られて号泣していたところと、高橋啓次郎に「Unityはもっと凄いもの作れるだろ」と言ったことは覚えているのだが、たぶんみんなに迷惑をかけちゃったと思う。申し訳ない。

それで一日あけて、今日。
すごい48時間だった。

GGJは僕にとってすごい経験になった。
去年はFGJの主催には入ったけど、実際に参加はしなかった。

けど、これは見るとやるとじゃぜんぜん違う。
ギリギリのなかで、ヒリヒリするような感じ。

生きてる、おれは生きてるって思う感じ。
相手を信頼するという感じ。

いろいろあるけどひとつだけ言えるのは、GGJに参加して本当に良かったってこと。
各人が自分の持てる力の全てを出し切って、ひとつの目標に向かって努力する。

こういうイベントがもっとあればいいのに
と思った。

このイベントのために会場を開放してくれた国立情報学研究所の長久先生には本当に感謝している。
もちろんIGDAの新清士や小野さんにも。

今年は日本だけでも200人以上の開発者が参加したそうだ。
前回の福島ゲームジャムの二倍である。

これからもっと増えて行くだろう。

こういう感覚は普段はなかなか意識しないし、味わうこともできない。

今回は1万人を超える開発者が参加したらしい。

NII会場で開発されたゲームはここから見ることが出来る

他にも無数のゲームが開発されて、そのほとんどはブラウザ上でそのまま遊べるか、ダウンロードして遊べるようになっている。

凄い時代になったものだ。

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