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ガジェット開発の裏側:「あったらいいな」を「ちょっと便利に」—「クマザキエイム」上瀧氏に聞く

ガジェットは独特の魅力を持っています。

普段、我々は「ガジェット」というものを発売されてからしか知ることがありません。しかしその裏側には、新しいガジェットを創りだすため、日夜額に汗して企画開発に取り組む影のヒーローが居るのです。

「どんな人が作ってるんだろう?」と気になったことはありませんか?

例えば以前wise9でも紹介したベアーマックス製の電子黒板。今回は、そのメーカーである株式会社クマザキエイムさんにwise9編集部が訪問し、デジタルネットワーク事業部の上瀧氏にインタビューさせていただきました。ベアーマックスのガジェット製品が生み出される過程や、企業の裏側(?)まで聞いてきましたので、その模様をお届け致します!



 

メインコンセプトと開発商品

 

——本日はお忙しい中ありがとうございます。まず失礼ですが御社をご存知ない読者向けに、御社がどのような事業を行っていらっしゃるのかを教えていただけますか?

メインコンセプトは、「あったらいいな」を「ちょっと便利に」です。「すごい便利」っていうんじゃなくて、(「ちょっと便利」に、「あったらいいな」をモノにする)、をメインコンセプトにモノづくりをしていまして、一般家電を作ってます。例えば超音波でシミを落とすやつとか、一見普通のラジカセみたいな機械なんですけど、後ろにマイクを刺すとカラオケが出来るCD・DVDラジカセとか。「あったらいいな」と思ったモノで、実際に誰もやっていないモノをやってみるという事ですね。

 

——「ありそうでない」モノですね。

そうですね。誰かが少しは思ったり、考えてやってみたりするんだけど、途中でやめてしまうモノをちゃんとやるみたいな。

 

——この「小型炊飯器 ライスクッカー(1.5合)」もそのような製品ですよね。

一人暮らしの方や、昼間の主婦、おじいちゃんおばあちゃんはそんなに食べないので、ちっちゃい奴で十分なんですね。この薬箱とかも割とそんな感じ(ありそうでないモノ)です。棚の数が七個ありますんで、月火水木金土日のシールが付属でついてます。棚の中が四つに分かれてますから、中に朝昼晩、寝る前で薬をバラバラに入れておけるんです。朝昼晩、寝る前にアラームが鳴ります。それでお世話をしている方に入れておいてもらって、(アラームが)ピピピと鳴るので飲み忘れない。

 

——この「ホワイティー ピカ」も良さそうですよね。

汚れやシミ等も超音波の力で弾き飛ばす充電式超音波クリーナー「ホワイティーピカ」

実はこれ、「ガリレオ脳研」というテレビ番組で紹介されました。伊東四朗さんが「これは何をするものでしょう?」というクイズをやって…。放送はまだと言われてたんですけど、実はすでに放送されて、「放送あったらしいよ!?」「え〜誰も見てないよ!」とか言ってました(笑)。その週明けの月曜日の朝に知って、会社に来たら問い合わせが凄かった。

 

——さきほど皆さんが電話に出てらしたのは、そのためですか?

それもありますし、今ワンセグテレビを日本文化センターで売ってるんですよ。おじいちゃんおばあちゃんがターケットなので、「荷物が着いたんだけど、電源点かないんだけど」みたいな電話がかかって来て「電源さしましたか?」と聞いたら「ん、さしてないよ」みたいに言われるんですよ(笑)。そんな電話も皆で受け付けています。これ(ポータブルデジタルオーディオプレイヤー/レコーダー【デジらく】)もそんな感じで、完全におじいちゃんおばあちゃん向けですね。これはインプットが横についてまして、普通のラジカセのイヤホンのアウトプットからラインを入れて、カセットテープに録音するようにダビングできるんです。

ポータブルオーディオプレイヤー/レコーダー【デジらく】

 

——「ダビング」という言葉が懐かしいですね。

そうですね。ダビングって言葉が懐かしいように、「テープに録音」を押して、CDを再生してカセットテープに録音した、あのプロセスって、おじいちゃんおばあちゃんには体に染みて残ってるんですよ。「MP3に変換して」とか「プレイヤーをUSBでパソコンに繋いで同期かけます」とか言われても「はあ」ってなるんです。でも、iPodは使えないけれども、そのダビングのプロセスは体に残ってるので、そのプロセスで録音できますよ、という製品です。

 

——この「カメラ付きボイスレコーダー」は、どうして写真をとれるようにしたんですか?

ウチは、日本直販さんなど販売店さんからの細かいリクエストを聞いて、すぐにモノづくりをするんです。それで、「写真が取れるボイスレコーダー」が要求としてあるんだって言われたので、作ったんですよ。

 

——音だけではなく、写真も見たいということですか。

そうですね。やっぱり「カメラ」となると操作は煩雑になってくる、とか、ちょっとしたものでいいんだけどね、みたいな。「カメラ付きのボイスレコーダーを作れ」という至上命題が社長経由で顧客からあって、「お前探してこい」と社長に言われて、探してきたのがそれだったんですよ。その要求にぴったり合うのはそれだったんです。そういう製品も意外とありそうでやっぱりなかったんですね。

 

少人数での運営

 

——現在非常に少ない人数で運営されているという事ですが。

正社員が12人ぐらいで、後はパートさんですね。

 

——製品の企画会議はどのように行うのですか?

いろいろなケースがあります。我々として「こういうのやろうよ」って持ち上がってくる。それでモノを作っていく完全にウチでデザインするパターン。工場の方から提案されるパターンもあります。「ウチでこんなん作ったんだけどちょっと日本で売ってよ」ということで工場側が持ってくるパターン。あとお客さんのリクエストを受けて探してくるパターン。リクエストの代表的なのが「カメラ付きボイスレコーダー」ですね。

 

——開発者は何人くらいおられるのですか?

開発者は、技術では二人ですね。

 

——技術者二人で製品開発をしていると時間がかかりませんか?

外部委託に一人いて、担当が微妙に分かれていて計三人で開発しています。そんなに小難しいものではないので、開発期間はそれほどでもないです。工場側に提案されてそれをブラッシュアップしましたよ、っていうものではないものはやっぱり時間はかかりますね。

 

——技術以外というと、企画などでしょうか?

企画とかですね。技術的知識がそこまでいらない製品もいっぱいあるんで。これは三人ですね。

 

——残りの方は営業ということでしょうか。

そうですね。ただ、僕は今どこにいるんだろうっていう(笑)。工場に行って製品を見てきたり、検品に立ち会ったり、開発の部分にも関わったり。これも持ってきたんですけど。

 

「触れる」文教分野製品

 

——これはなんですか?

これはAndroid端末ですね。

 

——「速い」など何か特徴はあるのですか?

普通ですね。特に敢えて端末には特徴を持たせてないです。

 

——どのような売り方をするんですか?

「コンテンツ」を持っている会社さんに対して、ハードウェア屋として「弊社のハードウェアに乗せて一緒に売ったらどうですか」といった提案をします。「コンテンツ」を持ってるところに問いかけていって、(例えば)「その御社のコンテンツをウチの電子黒板でやったら大きくて迫力ありませんか」みたいな提案だったり。

 

——この縦横比は使いやすそうですね。パソコンと同じ(4:3)で、なんとなく親しみのあるというか。

そのサイズの端末使いやすいなあと思って。特に何が凄い、例えば速い、という訳じゃ無いんですけど。

 

——これはどうやって仕入れるのですか?中国に行かれるのですか?

中国に行って、さんざん偽物を掴んだ上でフィルタリングするんです。あとは私の個人的な感覚の問題になるんですが、ちゃんとその工場が言うことを聞いてくれるか、日本市場にフィットするモノを作ってくれるのかなっていうのを話をしながら見極めて、話を付けやすい工場であれば話をして、モノづくりをしていくんですね。

 

——ペンは使えますか?

静電容量式なのでペンは使えないんです。ブラシタイプなら使えます。

 

——電磁タブレット内蔵の端末は出来ないのですか?

できますよ、やろうと思えばいくらでも。

 

——なぜ電磁タブレッド(ペンタブ)内蔵したアンドロイド端末って、世の中に出てこないのでしょうか?傾きや筆圧を認識できる、Wacomさんの製品のような。

じゃあ…電磁タブレット、Wacomさんの半額!Wacomさんの相場は1インチ一万円くらいなので、1インチ五千円ぐらいですね。(これは)19インチなんで、上代が十二万円。上代っていうのは、希望小売価格、定価のことです。それでもそれにAndroidを組み込んだら現実的な価格にはなかなかならなそうですね。

 

——希望小売価格というのはまだあるのですか?

業界としては。うちらの業界、一般家電は問屋さん、流通会社さんを使っていて。問屋さんがいて、その問屋さんが全国の小売店に落としてるんですよ。そういった流通の中では希望小売価格っていうのは設定されます。

 

——おじいちゃんおばあちゃんは買わない製品だと思われますが、おじいちゃんおばあちゃん向け以外のものも作っていかれるということですか?

7月の展示会に向けて、おじいちゃん(向け)以外のモノも作っていくぞ、ということで文教分野であったり、「タッチ」を基本コンセプトに、役に立ちそうな商材をあちこちから引っ張ってきてるんです。Wacomさんの製品はデュアルディスプレイ出来ないんですよ。どうしてもクローンディスプレイなんです。これはデュアルができます。且つここにVGAアウトがあるんで、これを電子黒板等に映せます。

 

——この製品の末端価格、売値はどれくらいになるのですか?

10万円くらいですね。

 

——10万円でしたら買われるところも多いのでは?

そうですね。Wacomさん使ってるところは「じゃあ買うよ」みたいな。紹介したら買ってくれるんです。塾さんとかで。

 

——塾ではどのように使われているのですか?

遠隔で塾やってるって感じです。ログインして、講師が手書きで板書していくんですよ。

 

——先生がタブレット端末に書いて、電子黒板に出力するということですね。

そうですね。黒板形式だとやっぱり後ろ向かざるを得ないんですけど、後ろ向かなくていい。あとは、例えばこっちにカンニングペーパー、(話す内容を)書いておいて、こっちでプレゼンをできますよと。

ぜひこれを御社のデザイナーに。

 

——実は、本職のデザイナーはこのような液晶タブレットを使わないみたいなんです。手で隠れて見ずらいので、画面と手元が別がいいんだそうです。なので今は普通のタブレットでやっています。私は断然こちらの方が好きですが。スマートですよね。かっこいいと思います、Wacomの製品より。

あとはこの辺にロゴを入れるかどうか、入れるとくどいかなあと思ってたんですけど。

 

——ロゴと言えば、Appleのようにあっても後ろや見えないところだけでいいと思います。AppleもiMacなどはリンゴマークがあったりしますが。ピクトグラム等の方が邪魔になりにくい。iPhoneのデザインが完成されているのは、正面から見たとき何もないという点なんですよね。こういったことが本当はすごく大事だと思うんです。

 

価格の「バランス」

——こういったタブレット端末は、LEDなどを使ってさらに薄くできないのですか?

価格が跳ね上がってしまうので…。

 

——なるほど、そうですね。今の段階で価格のバランスはちょうどいいということなんですね。

そうですね。例えばなんですけど、その価格のバランスっていうのを、ウチとしてはこの関連商材(電子黒板)で重視してまして。既存の大手の電子黒板って赤外線式が多いんです。赤外線式っていうのはセンサーがこういう感じで画面の上下左右の辺に等間隔に生えてて、赤外線を飛ばすんです。で、向かい側の辺で受けるんですよ。そうすると、赤外線が格子状に走るのでどこまでいってもグリッドなんですよね。するとセンサーのピッチ次第なんで、斜め線がグリッドになっちゃうんです。

 

——ギザギザしてしまうということですか。

 

そうですね。それで、このセンサーのピッチがいかに細かいか、みたいな勝負になってるんですよ。赤外線の式の電子黒板だとこういう弱みがあるんですね。これをカバーするために、ソフト側でアンチエイリアスをかけて、一秒位かけて補完したりとか。あとは超音波のセンサーとハイブリッドになっている専用ペンで、ハイブリッドなんで斜め線がきれいに書けるとか。そういう風にあれこれくっつけてハイスペックになると、結果的にすごい価格が上がるんですよ。
ウチはカメラ式で波形を見てるんですね。二機のカメラで位置を見て、差分を計算して位置をうんたらかんたら、長くなるので省略しますが、要は斜め線をきれいに斜め線として書けるんです。こういう強みがあります。この場合もっと良くしようとすると三つ目のカメラが必要で、そこまでやると価格がすごいあがるんです。結果的にまたエンドユーザーに広がらない価格になってしまうので、それはやらない。

 

——それで82インチまでカメラ二個でやっていらっしゃるのですね。

そうですね。それがもしも今後落ち着いて、もっと技術的に安定して、安定した価格で出せるような目処が立ったら、もちろんカメラが三個の電子黒板を開発していくんですけど。今のところウチとしてはまだない。もちろん視野には入れてます。それでも欲しいよというのであれば、一台二台とか、サンプル的に使っていただいて、フィードバックしていただく。そのかわり格安で三点カメラの電子黒板を使っていただく、というのを考えています。価格的に大手メーカーはコンプライアンスで価格が高いじゃないですか。ウチは変なコンプライアンスが無いですから安いです。コンプライアンスって大事なとこって意味ではなくて、ウチでは変なプロセス通らないし、関わってる人も少ないので、社内ルールもガチガチではないので価格を安くできる。それこそたまに「社長!ここ利益無しでとりあえず入れちゃいましょうよ、恩売っちゃいましょうよ」みたいな勢いもあったりします(笑)。

 

——なぜ電子黒板作ろうと思われたのですか?

「スクール・ニューディール」っていう話題、韓国は2013年までに全教室に電子黒板が入って、一人一台タブレットPCだとか、2015年までに中国は80%はなんちゃら、とか、フィリピンでは既に40%だとか60%だとかっていう話が出たときに、ウチの代表が「日本では全然進んでないじゃないか!けしからん!なんで日本が出来ないんだ。そんなのろのろしてるからサムスンに世界的な市場を奪われるんだ。誰もやらんならウチがやる!」みたいな夢があって。日本の教育を変えるというか、IT教育に一石を投じるのが、熊崎の夢です。小さい会社なんでどこまでいけるのか分かんないですけど、壮大な夢としてあって。それを現実レベルのビジネスにまで落とし込む、ここに近づくにはどうしたらいいんでしょうね、っていうのを我々がやってるという感じですかね。

「いや社長、それいきなりは無理ですよ、こうやらざるを得ないですよ!」みたいに言いながら(笑)。「億単位の開発ですよ!」と言うと、「じゃあお前が電子黒板を売って、その億稼いでお前が開発しろ」って(社長に)言われたりするんです(笑)。

 

——このLEDプロジェクターもいいですよね。ファンはついているのですか?

ファンはあります。ちょろっとあります。LEDなんで熱を持たないんで静かですよ。DVDプレイヤーとステレオがついて、例えばクマザキエイムのHPで買うと59800円。

 

——これはパソコンもつなげることができますか?

つながりますよ。VGAがささりますから。

 

——何ルーメンくらいなのですか?

250ルーメンです。

 

——やはりLEDなので、光量は少ないのですね。

ただ、同じルーメン数では量れない部分はあります。今までの、水銀灯とかの方式ですと、光が強くないと色も良くなかったんです。けど、映し出す方式自体が違うので、そのルーメンでも発色自体はきれいです。あと業務用レベルでは、明るい画面で映せるか映せないかっていう問題もあります。ただこれは家庭用なので、そのような問題は無視できるので、きれいに発色させる為に電気をたくさん使っても大丈夫は大丈夫ですけど、当然電気代がかかる。水銀灯ランプって一個交換すんのに二万円とかかかるんですよ。ランプ自体が安くて二万。そこからいろいろかかって、安くても3万。水銀灯ランプの寿命はだいたい平均2000時間くらい。LEDはその十倍なので、ランニングコストもかからないです。

 

将来像と夢

 

——これらの製品の将来像、どのような方向性に持っていきたいか、例えば「どんな風にこの製品は使われていくだろうか」といったビジョンはあるのでしょうか?

「当たり前に」皆さんに使っていただけるようになってほしいかな。「当たり前に」。今ですと驚くじゃないですか、「おぉ〜」みたいな。よくよく考えるとそれに近しいものって生活の中にあって、それを導入していく事自体は難しい事じゃないと思うんですよ。「触れる」とか、それこそユビキタスもそうだと思うんですけど、どこでも常にネット環境にあって、常に欲しい情報を取り出せるようなプラットフォームとかって、作る事自体そんなに難しくないと思うんですよ。単純にお金の問題ですよね、今の技術力で「難しくない」ですね。下から上まで全部作ったとして、ビジネスモデルにまだなっていない。いろんな意味で企業やエンドユーザーがまだそこまで進んでないんですよね。でもなんだかんだでスマホも普及してきて、ユビキタスの意味も全く理解していない、クラウドコンピューティングって言っても「ん?」って言うようなウチの嫁も、家族なんかを撮って同期してその写真をpicassaにいれて見てるんです。それっていうのは「当たり前」になっていて、そういうもんだよ、みたいな。今までだったら「おぉ〜」だったものが、そういう風になってきているので、それが進んでいく中で、画面や看板に触るとか、触って操作をしていくみたいなことが進んでいけば、きっとソフトウェア側も、例えばワードとかも、もっと手書きが上手にできるようになったりすると思うんですよ。そういうものがどんどん進んでくと、「当たり前」になっていくと思うんですよね。そのときにちゃんとウチとして、それに関わっていきたい。ITっていう先端技術を生活のレベルに落としていって、本当に役立つものにしていきたい、尖ったものではなくて「本当に役立つもの」にしていきたい。そういう意味で「当たり前に」なっていけばと。

 

——ハードの調達だけではなく、最新の技術をうまく利用して人々の生活のなかへ組み込んでいるクマザキエイム。エンドユーザを意識した独特の視点は、かゆいところに手が届く商品を生み出していた。大手メーカーではなかなかできない柔軟な視点が、電子黒板のみならず、魅力的な商品を作り上げることを可能にしているようだ。クマザキエイム上瀧さん、本日はありがとうございました!

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