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陸前高田で考える。ゲームの持つポジティブな力と水口哲也と電通

やあshi3zだ。

 

僕たちは#givePC4Japanというプロジェクトをやってる。
これは、ジャーナリストの津田大輔(@tsuda)さんの発案で、被災地でPCが足りなくて困っているという話を受け、余ったPCを現地に直接届けようというプロジェクトだ。

被災地にノートPCを届けよう! #givePC4Japanプロジェクト
2005年発売以降でWiFiと有線LANが完動するノートPC[livlis]

今回は、二週間の募集で約7台のコンピュータが集まった。

これが少しでも誰かの役に立てば、と思い、僕は一人クルマを飛ばした。

高速道路を走っている間はほとんどなにごともなかったかのようにすぎていく。
しかし、高速を降りてしばらく海岸に向かって走ってみると、あまりの光景に僕は思わず言葉を喪った。

最大の被災地とも言われている陸前高田市の付近だ。

ここはまだ山の中だ。
なのに川が逆流して、なにもかも流してしまった。
まるで宅地造成の更地だが、実際はまだ処理もされていない瓦礫が散乱している。

福島から陸前高田まで、ざっと200キロはある。
200キロもの海岸線に沿った地域すべてがとてつもない被害を受けているのだ。

もちろん被害はここで終わっていない。
さらに200キロ北上した地域も壊滅的な被害を受けている。

これはやはりとんでもないことが起きてしまったのだ。

 

この光景を前に、僕はとてつもなく無力だ。

待ち合わせ場所に指定された地点へ行ってみると、ご両親が地元で電気屋さんを営む佐藤さんという方と出会った。

ご本人は盛岡市に住んでいるので無事だったが、ご両親の家や会社はもうすべて流されてしまったのだと言う。

いまは仮店舗でお店を開いているのだそうだ。

佐藤さんとお母さんは、みんなから送られて来たPCを受け取ると涙ぐんでお礼を言った。

なんどもなんども感謝されて、僕はなんというか、複雑な心境になった。
そこまで感謝されるほどのことを僕たちはやっていない。

僕が被災者にならなかったのは、たまたまだ。

たまたま被害にあわなくて元気だったから、こういうことをすることにしたのだ。

なんだかばつがわるくて、その場はすぐに退散させていただいた。

何度も断ったのだけど、お礼にお蕎麦とリポビタンDを頂いた。

せっかくだからありがたく頂くことにする。

 

いっぽう、津田さんは今日から仙台入りして、各地の被災地を長期的に取材する。

その際、各避難所でPCが足りているか確認し、足りてない場合にはその都度、連絡が来て、僕はその避難所へPCを送る手はずになっている。

マシンそのものはまだ募集を受け付けているので、もし余っているノートPCがあったら、ぜひ送ってほしい。

 

そのとき、ちょうど東京ではTEDxTokyoが開かれていた。

TED(テッド)とは、テクノロジー、エンターテインメント、デザインの略で、そういったことならなんでも扱うカンファレンス・イベントだ。

TEDが凄いのはなによりその講演者の顔ぶれだ。科学者やパーカッショニスト、ミュージシャンから大統領まで幅広い。

たとえば、生物の遺伝子(DNA)が二重螺旋構造であることを発見してノーベル賞を受賞したジェームズ・ワトソンや、アメリカ合宿国大統領のビル・クリントン、Wikipediaの創業者であるジミー・ウェールズ、アメリカ合衆国元副大統領で「不都合な真実」の著者、アル・ゴア、そしてGoogleの創業者、ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンなど、蒼々たるメンバーである。

 

TEDxTokyoは、そのTEDの、いわばローカル版である。TEDは世界中にローカル版が開催されており、TEDxTokyoもそのひとつだ。

ただし、今回のTEDxTokyoはいつもと状況が違った。

というのも、大規模な震災が起きた直後の、初めてのTEDだったからだ。

つまり被災地・日本から世界に向けたメッセージの発信の場ともなり、TEDのローカルチャプターとしては初めて、全世界に同時中継されることになった。

 

一ヶ月ほど前、僕はゲームプロデューサーであり、元気ロケッツのプロデューサーでもある水口哲也と西麻布の隠れ家的な個室バーで、久しぶりに酒を酌み交わしていた。

 

水口哲也は、「おれ、来月、TEDxTokyoで喋るんだ」と言った。

最近、彼はよくNHKに出るようになった。

世界中のクリエイターにインタビューする形式で、彼はさまざまなことをどん欲に吸収していく。

 

「なあ清水、”ゲーミファイ”って知ってる?」

 

僕は首を振った。

 

「なんです?それ」

 

「ゲームの力を使ってさ、ゲームの外の世界を動かすんだよ。EVOKEっていう社会貢献ゲームがそれで成功を治めているんだ」

 

「社会貢献をゲームで、ですか・・・」

 

それで僕は思い出した。

そのテーマは、最近僕の仕事のテーマにもなってきている。
それで先日、電通の社内研修として、ゲームと社会貢献について考える、というのをやったのだった。

 

24時間でとある企業のサラリーマンとOLたちが知恵をあわせて社会貢献ゲームを企画してみた顛末

 

その優勝企画があまりに素晴らしかったので、僕は電通に頼み込んで作らせてもらうことにした。

ところがあの震災だ。

震災の直後、東京に戻って来た僕は、電通の優勝チームと、UEIのスタッフを集めたミーティングを開いた。

 

「いま、果たしてこの企画を進めていいのかどうか、正直僕自身にもわからない」

 

それでその企画はいったんはペンディングとなった。

正直、これは没かな・・・僕はそんなふうに思っていた。
そういう油断も手伝って、僕はポロリと水口哲也に漏らしてしまった。

 

「社会貢献ゲームなら、僕も電通と一緒につくるはずだったんですけどね」

 

そして概要を聞いた水口哲也は即座にこういった。

 

「それ、やらなくちゃならないだろ」

 

「え、いや、こんなご時世だし・・・」

 

「だからこそ、やるんだよ。清水。おまえもおれも、テクノロジーのポジティブな力を信じて生きてるんだ。テクノロジーがポジティブに作用できるとき、行動しない手はないぜ」

 

「しかし電通さんの都合もあるし僕だけでは・・・」

 

「電通をなんとか説得できないかな」

 

それからいろいろあって、ひさしぶりに開かれた会議で、僕は水口哲也と話したことをみんなに伝えた。

 

すると細金ECDがまず食いついた。

 

「TEDだって!? TEDで話してくれるの!?」

 

「うんまあ。TEDxTokyoですけどね」

 

「それでもそれは凄いことだよ。TEDの舞台にdentsuの文字が出ることが会ったら、それは歴史的なことだ」

 

「じゃあ水口さんに話していいって言っちゃいます?」

 

「ぜひ話してもらおうよ。それで、少なくともタイトルとかは決めないと行けないよね。いつまでに決めればいいんだろう」

 

「まあTEDはもう少し先なんで時間的余裕はあると思いますが・・・」

 

それから帰りしな、水口哲也に電話した。

 

「そうか。電通を説得してくれたか」

 

「いや、説得したというより二つ返事でしたけど」

 

「だとしたら、30秒くらい、君たちのプロジェクトを説明するためのスライドか、ビデオが要るな。それ、作れる?」

 

「30秒・・・わかりました。いつまでですか?」

 

「実は閉め切りは今夜なんだけど・・・」

 

「えええっ」

 

「なんとか明日の昼まで伸ばしてもらうから、明日の昼までに頼む。おれも原稿、それにあわせて全部書き直すから」

 

これはえらいことになった。

その夜、急遽、電通チームとUEIチームが招集された。

わずか30秒。そのなかで世界に伝えるメッセージをまとめなければいけない。

9時にSkypeで水口哲也とミーティング。

なにしろまだゲームのタイトルすら決まっていない。

細金ECDも深夜1時に合流し、必死でタイトルを考える。

30秒という制約のなかではタイトルが全て、だ。

 

並行して、近藤誠がデモ用にクリムゾンフォックスで使用したARパススルー画面を制作する。伏見君が実際のデモ画面用のアニメーションをプログラミング。

午前3時。タイトルが決定。

「BANG 100 MILLION MINES」日本語では、「BANG 一億の地雷」

カンボジアには1500万人の人口に対して1500万個の地雷が埋められているという。

世界最大の地雷地帯だ。

その”状況”を、日本にそのまま持ち込む。

1億の人口に対して、1億のバーチャル地雷を日本中にばらまき、それを除去するというゲームだ。

しかも、ゲーム中の地雷を除去するだけでなく、実際にカンボジアの地雷も除去されるような課金の仕組みも備えている。

 

このゲームが成功することで、世界から対人地雷を根絶することができるかもしれない。
まさにゲームの持つ「ポジティブな力」が具体的な力となって社会に貢献するのだ。

 

ポストイットに絵コンテを書き出し、何度も順番を入れ替えたり、メッセージを入れ替えたりして吟味する。

電通の下大洞さん、井戸さん、そして細金さんは徹底的にメッセージを練った。

エリックが作業にかかれるところから先に映像の編集を始める。

空が明るくなって来た。

仮の絵コンテをもとに、僕と須田君がベランダで撮影開始。

デッドラインは午前11時。

僕と細金さんはしばし記憶を喪う。トシだね。

それから目が覚めると、太陽はとっくに上っていて、ビデオはほぼ完成に近づいていた。
エリックが手慣れた操作でビデオを瞬く間に編集していく。

しかし驚いたのは、下大洞さんと井戸さん、電通チームの二人が、まだコピーを考えていたことだ。

もちろんビデオはとっくにできている。
しかしまだ〆切まで数十分ある。ほんとうにそのコピーでいいのか。
ほんとうにそれで伝わるのか

英語でコピーを考えるのは本当に難しい。

よく、冴えない代理店やなんかが、安直な中学生英語で書いた恥ずかしいキャッチフレーズやコピーを持ってくることがある。

しかし、そんなものは、物笑いの種にしかならない。

英語で、しかも”心に刺さる”コピーを考えるのは、我々日本人には一筋縄では行かない。
アメリカ人のエリックが居たからこそ、それがきちんと「刺さる英語」として成立する。

たった一行、たったひとつのメッセージのために徹夜で何時間も集中して考え抜くことができる。これが一流の仕事人なのだ。

だってふつう、ちょっといい文章ができたら、そこで「よっしゃよっしゃ」と思っちゃうでしょ?

彼女たちは違うのだ。最後の一分、一秒まで力を出し切る。一流のアスリートのような体力と集中力で考え抜く。

僕はその仕事への真摯な、あまりに真摯な姿勢に感動した。

そして最後、水口哲也と再びSkype。

彼は僕たちの労をねぎらい、僕たちはひとまず解散する。

その日はちょうど#genkinipponの賞品のiPad2を手渡ししに行く日だった。

僕と須田君は徹夜明けの重いからだを引きずりながら、千葉県柏市まで行った。

彼が今回の受賞者。DTPオペレーターをされているそうだ。

Livlisのシステムによる厳正な抽選によって選ばれた。

しかしちょうど先日、WiFiを解約してしまってWiFi回線がないらしい。

彼を含めて多くの人々が寄付を通じて震災復興に向けて行動を起こしてくれたことは素直に嬉しい。

@fladdict氏の考案した寄付ハックという仕組みも、いわば一種のゲームであり、水口哲也のいう「ゲームのポジティブな力を使った社会貢献」だ。

 

それから水口哲也はパリに

僕は彼とスカイプで連絡をとりながら、彼は全体の構成を決めていった。

そしてついに本番

それがどんなふうだったか。

言葉で語るのはちょっと野暮だよね

 

 

 

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